「えっ?増える??」
――― 篠原日葵(しのはらひまり)、17歳の春。
どうやら、家族が増えるようです。
その日、学校から帰ると、家が騒がしかった。
「お父さん、こっちですよ。」
「あ、そっちか。」
この時間に、お父さんがいるのは珍しい。
「ただいま。」
「おかえりなさい、日葵。」
「ちょうどいいところだ。日葵、少し手伝ってくれないか。」
「はーい。」
お父さんに言われ、カバンをおろし、しず姉の部屋に向かう。
「お姉さん、帰ってくるんですか?」
私はカーテンを取り換えながら、壊れた引き出しを直しているお父さんに聞く。
私の三つ上のしず姉は、京都大学に通っている。
京都に行ってからは、いろいろと忙しいようで、ここ二年ぐらいは電話でしか話していなかった。
「いいや、違うんだ。
明日から、うちに新しい家族が増えるんだよ。」
「えっ?増える??
...まさか、養子ですか?」
「いやいや、養子じゃないよ。
父さんが今、大学で研究している特殊な病気の患者でね。
しばらくうちで預かることになったんだ。」
「それで、しず姉の部屋を?」
「そう。その子の部屋にしようと思ってね。」
そう聞いて、私は少しうつむいた。
(ちょっと不安だな。)