「じゃあ、クレアちゃんはお父さんと二人だけで...」
「そう。
それから俺が4歳ぐらいのときだったと思う。
イギリスのじいちゃんばあちゃんに家族で会いに行った時、たまたまそこにいたクレアとその親父さんに、ばったり会っちゃってさ。」
冬真君はなにかを思い出すような、遠い目をした。
「たしかすっげー驚いてたなぁ~、俺の母さん。
それからクレアの親父さん、クレア連れてすぐ帰っちまったらしいけど...。」
私の勝手なイメージで、その時のクレアちゃんのお父さんの表情が、なんとなく浮かんだ。
「やっぱり、まだ心の準備とか...」
「たぶん、そうだろうな。
そんでその日に俺の母さん、ばあちゃんからクレアの家族のことをいろいろ知ってさ。
次の日に母さんが俺連れて、クレアの親父さんのとこに謝りに行ったんだ。
その頃にさ、クレアの親父さん、たぶん必死に働きながら子育てもしてで、体悪くしちゃっててさ。
...『がん』だって知ったころには、もう遅かった。」
「えっ...」
思わぬ真実に、私は言葉を詰まらせてしまった。