「い、いいます、いいますっ!!

わ、私っ、『許嫁』というもののことが気になっておりましたっ!!」



「...は?」



「だっ、だからっ!

冬真君の『許嫁』のことがずっと気になってたの!!」




私は両手を握って目をつむり、最後の勇気を振り絞ってそう叫んだ。


しばらくの沈黙のあと、冬真君の手がパッと離れた。


私はそっと目を開ける。




「なんだそれ。

おまえやっぱ、バカじゃん?」



「...えっ?」




冬真君は「はぁ~」とため息をついて、自分の髪をワシャワシャしている。




「毎日一緒にいるやつと、顔もどんなかよく覚えてねぇやつと、どっちのほうが大切なわけ?

これくらい、言わなくったってわかんだろ、フツー。」



「で、でもっ、やっぱりこれからのこととか、そのっ、...のこととかもあると思うしっ。」



「なにもごもご言ってんだ。

聞こえねぇよ。」




そういって冬真君が、私の口元に耳をよせる。