剛に強引に手を引かれ、やってきた放課後の屋上。
(早くしないと、冬真君が...)
教室から出る前に見た時間は、たしか5時半ごろだったような気がする。
「剛、どうしたの?
こんなところまで連れてきて...」
気が済んだように私の手を離した剛は、私に背を向けたまま話し出した。
「...おまえはさ、アイツの事が好きなんだろ?」
「うっ、...うん。」
私のその返事にバッと振り返った剛は、悲しさに怒りを秘めた、なんとも言えない表情で私をグッと睨んだ。
「あんなヤツ好きになったって、あとで悲しむのはおまえなんだよ!!」
「そっ、そんなの、剛には関係ないじゃんっ!!」
私がガツンと放った一言で、グッとなにかをこらえたような剛は、手をギュッと握ってうつむいた。
「 ――――― 俺のほうが...」
それだけボソッといった剛は、何も言わずに立ち去ろうとする。
「...ん?
剛...」
うつむいたままの剛が、私の横をスッと通り過ぎた、その瞬間。
ボスッ
「...えっ?」