学校中を、駆け回る。



校舎裏、体育館裏、校庭の隅...。


どこを探しても、日葵の姿はなかった。




「ハァ、ハァ、ハァ...

残るは、...屋上だけだなっ。」




俺は階段を駆け上がる。


腕の時計は、もう5時50分を指していた。




(ヤバイっ...

どこにいんだよっ、日葵!!)




屋上のドアが見えて、やっとの思いで俺はドアノブに手を伸ばした。




 バンッ




「ひまっ...」



(...えっ?)




目の前の光景に、俺はつい言葉を詰まらせてしまった。





俺の目に映ったのは、アイツの後姿。



...と、その背中に後ろから包まれている、日葵の背中。





(日葵が、抱かれている...)





俺が知っている日葵なら、男にこんなことをされれば必ず抵抗するはず。



だが、そこにいた日葵はじっとしたまま、アイツに後ろから抱かれていた。




(なんでだよ...)





時計の針は、5時57分。




時間のせいか、気持ちのせいか。




俺の足は、自然とその場から逃げるように離れた。