――― 放課後。
俺と日葵は、誰もいない教室で二人向き合い、勉強をしている。
勉強をしているというか、俺が日葵に教えている。
「だからここは、『study』よりも、『learn』のほう。」
「なるほど...」
「ココの動詞は、『過去形』じゃなくて『原形』。」
「そうなんだ...」
俺が言ったことを、ひとつひとつ丁寧にノートに書き込む日葵。
あれやこれやと教えているうちに、時計の針は5時を指していた。
(もう5時かよ。早いな...)
「日葵、5時半になったら帰んぞ。」
「あと30分...
レオ君になっちゃうのって、6時だったよね。」
「あぁ。」
そういった日葵は、隠したつもりなんだろうが、寂しそうな表情がバレバレだ。
(また、そんな顔しやがって...)
こういう顔を日葵にされると、俺のスイッチがONになってしまう。
俺はたまらず、目の前にあった日葵のノートをパタンっと閉じた。
「ちょ、冬真く...」
「なに、寂しい?
俺がレオになっちゃうの。」