(あぁ~、もうイヤ-!!///)




私は自分の赤い顔を隠すように、そっぽを向く。

そんな私を見たせいだろうか、さっきまで笑っていた冬真君も黙り込んでしまった。


保健室には、校庭のほうから聞こえる生徒の声だけが薄々と響きわたる。




「...なんで?」



「えっ?」




沈黙の続く張りつめた空気を切り裂くかのように、冬真君が口を開いた。




「なんで、怒んないの? お前。」



「...怒る?」



「お前、初めてだったんだろ。

...キス。」



「そっ、そんなの、あたりまえっ...」



「じゃあ、なんで怒んないんだよ。

俺は昨日、お前が部屋から飛び出してった時、すっかり怒ってたのかと思ったんだよ。」



(そうだったんだ...

だから、こんなに気にしてくれた...の?)



「そんで今日の朝、お前は怒ってるっていうより...変?って感じだったから。」




冬真君はそういって、困ったような顔をして首をさすっている。




「それから話しかけるたびに、ビクビクしてるっつーか。

俺のこと、怖がってんの?みたいに思えてくんだよ。」



「...ふふっ。」




私はたまらず、笑ってしまった。




「なに笑ってんだよ、人がせっかく...」



「だって、キスしてきたのは冬真君なのに、冬真君がこんなに悩んでるなんてっ...

ハハハッ!」




そういって笑う私を見た冬真君も、ホッとしたように笑った。




「やっと、元通りの日葵だな。」