そういった由夏は、抑えきれない笑みをボロボロとこぼしながら、ササーっと教室のドアを閉めてしまった。
「ちょっと、由夏! 待ってよ!!」
「おいっ、暴れんなよ。
落ちても知らねぇぞ。」
「もっ、もともと抱っこしてほしいなんて言ってませんっ!!」
「んなら、落とす。」
(えっ?落とす??
落とす~?!)
冬真君がそういうと、私を抱えていた冬真君の腕の力が急にゆるくなり、ストンと落ちそうな感じがした。
「ダメっ!落とさないで!!
離さないでっ!!」
思わず私は、冬真君の首に腕を回してしがみつく。
「フッ、バーカ。
な~に、しがみついてんの。」
そういって笑う冬真君は、ちょっとイジワルな王子様に見えた。
「最初っから、素直にしたがってりゃいいんだよ。」
冬真君はそういって、私をまさに『お姫様抱っこ』したまま、授業中の静かな廊下を歩き出した。