「なんで、一人で帰ってんだよ。」
ガードレールによりかかり、ポケットに手を突っ込んだまま、疑いと不機嫌が入り交ざった表情をする冬真君。
「えっと~...
ゆ、由夏が委員会でっ!」
「嘘だろ。
俺、アイツが教室からジャージで出てくの見たぞ。」
私の重なる嘘を、冬真君はすべて見ぬいてしまう。
「日葵、お前さ。
最近、俺のこと避けてんだろ。」
(ば、バレてた...)
私の声が聞こえたかのように、冬真君が言葉を続ける。
「あたりめぇだろ。
お前のウソなんて、幼稚園児のウソ見抜くよりも簡単だ。」
(よ、幼稚園児...)
たしかに私は、小さいころからお母さんに教わったせいか、嘘をつくのは苦手だった。
「で、なんで?」
「えっ?」
「なんで俺の事、避けてんの。」
「それは...」
(そんなの、なんて言えばいいのか...)
どぎまぎする私に、ポケットから手を出した冬真君が、腰を上げた。
「お前が言えないんなら、別にいい。
俺が勝手に、お前から聞きだすから。」
「...えっ?
えぇー?!」
「ほら、帰るぞ。」
そういって、スタスタと歩き出す冬真君。
(聞きだすって...
何されるの、私~?!)
「早くしろよ、日葵。」
「う、うん!」
私は急いで、冬真君のあとを追いかけた。