車が停止したのは劇場のような建物の前だった。

どうやらその建物が会場らしい。

到着すると三人は裏口からこっそり控室へ。

「フィアンセちゃんはどこの席?良ければ案内するよ~」

「あ…」

マズッた!と言わんばかりの声を出したのはフェオドールだった。

小鳥を見つめて申し訳なさそうに俯く。

「すまない…マドモアゼル。昨日の今日で、席が…」

「うわー、フェオってば席とらないで誘ったの?全く~!頭いいくせにうっかりさんだよね」

正しいだけにミロスラフに反論できない。

しゅんとなるフェオドールを元気づけようと、小鳥は明るく言った。

「私は大丈夫ですよ!席がなくても立って見てますっ」

「……一時間も…?」

「うっ……い、一時間くらいへっちゃらです!頑張ります!」

気合いを入れるべくガッツポーズ。

するとミロスラフが焦れったそうに足踏みした。

「ああもう!フィアンセちゃんが頑張ることないから!僕に任せなさい!」

ドンと自分の胸を叩くマネージャー。

「特等席を用意してあげる。特別にね」