そう思っていると少し経ってから綺麗な花屋らしきものが映しだされた。
そこに向かう一人の男の人。

その男の人は花屋に入ると「白い菊を六本ください。」といいお金を店員さんに渡し花を受け取ると店を出て行った。

そしてまた少し経つと男の人の横には綺麗な校舎が映しだされた。校門の入り口の近くには『桜木中学校』というプレートのようなものがある。その中学校を見て足を止める男の人。

もしかしてこの人が通ってた中学校なのかな?


「6年経った今でもここは何一つ変わらないんだな。」

画面の中の男の人がボソリとつぶやきふっと笑った。

やっぱりこの学校に通ってたんだ。

男の人は少しの間名残惜しそうに中学校を見るとまた歩き始めた。

そしてたどり着いたのは『杉宮家之墓』という文字が刻まれたお墓。

確か理菜の名字って杉宮だったよね?
っていうことはここは亡くなった理菜のお墓ってこと?

男の人は静かにお辞儀をすると買ってきた六本の菊を一本ずつ丁寧にさしていった。お墓にはこの男の人が来る前に誰かが来ていたようで、黄色い菊と赤いカーネーション、そして紫色に近いりんどうがさしてあった。

花をさし終えると男の人はしゃがんで目の前で手を合わせ話し始めた。

映画とかドラマならでわだよね。
人が心の中で話してることを話してるようにできるなんて。普通人の考えてることなんてわかんないんだから。誰だろう。こんなこと考えたの。昔の人は今の人より随分と賢かったみたいだね。

「俺はなんと医者になったんだ。」

へぇ…。この人医者なんだ。
大切な人を無くすと人は大きく変わるんだね。

「理菜。天国でもちゃんと暮らしているか?
元気にやっているか?
俺と理菜はいま遠すぎる遠距離恋愛だけど我慢しろよな?
また再び出会うことができたらまた遊んで話して出掛けて…。たくさんの思い出を作ろう。俺はその日が来るのを楽しみにしてるからな。また逢う日まで…。」

そう言い海斗は目を開けると広がる青空に向かって優しく微笑んだ。

微笑んだ彼の姿が少しの間映しだされ映画はエンディングへと入っていった。
物語を振り返るように今まで流れていた映像が少しカットされつつも流れている。
それに合わせてこの映画の主題歌であるなめらかで美しい曲が聞こえてきた。

劇場にいる私達はそのなめらかで美しいサウンドを映像と共に記憶に刻み込んだ。