そう。彼女に輸血した血液は理菜のものだった。理菜もRHマイナスのAB型という珍しい血液型だったのだ。献血のことは俺と理菜のお母さん、そしてお医者さんとりんかしか知らない。

その話が出たのは理菜本人からだった。

「先生…。私の血液…輸血する時に使ってください…。」

と理菜は言った。

元々弱っているのにさらに追い打ちをかけるように自分の珍しい血液を病院に提供すると言い始めた。

先生もお母さんもりんかも。もちろん俺もそんな無茶な理菜の考えに反対した。

だが理菜は

「いいから使って…。うちの血液使って…たくさんの人…助けてあげて…。しかもうちの血液型…レアじゃん?だからさ…使っていいよ…。」

そう言う切実な理菜の願いに最初に賛成したのはなんと理菜のお母さんだった。

「理菜…。理菜がそうしたいならお母さんはもう反対しないわ…。」

そう言って理菜のお母さんは理菜の血液提供を許可した。

こうして理菜の血液はこの病院にストックされたのだった。