「あぁ!杉原先生!!」

さっき電話をかけてきた石橋がパタパタと駆け寄ってきた。

「女の子の容態は?」

「意識不明の重体です。しかも出血多量のため輸血しなくてはいけません!」

「もう輸血はしたのか?」

「いえ、それが…。」

そう言って口ごもる石橋。

「なんだ、早く言えよ。」

それを俺が急かす。

「患者の女の子の血液型が…RHマイナスのAB型なんです…。」

RHマイナスのAB型…。

血液型にはみんなが知っているようにA型、B型、O型AB型の4種類がある。その4種類をもっと細かく分けるとRHプラスとRHマイナスの2種類がある。
日本国民ほとんどがRHプラスなのだがたまにRHマイナスが生まれることがある。つまりRHマイナスはとても珍しく輸血する血液があるかどうか…。

交通事故に合って出血多量になった女の子の血液型はRHマイナスのAB型。
日本でRHマイナスのAB型が生まれる確率は2000分の1。
その貴重な血液型のストックがこの病院にあることを俺は知っていた。

「RHマイナスのAB型のストックならあるよ…。」

「え!?そうなんですか!?」

「あぁ。」

「じゃあ持ってきます!」

再びパタパタと長い病院の廊下を走っていく石橋を俺は姿が見えなくなるまで見続けていた。