「理菜さん。失礼します。」

コンコンッという扉のノック音とともに看護婦さんとお医者さんが入ってきた。

「今日から抗がん剤治療を始めます。腕をこちらに向けてもらえますか?」

私は黙って袖をまくり先生に腕を向けた。

「少し痛いかもしれませんが頑張ってください。」

チクッとした痛みが私の腕に走りちょっとするとその痛みもなくなった。

「はい。ありがとうございます。もう戻して大丈夫ですよ。」

「はい…。」

私は小さな四角い絆創膏が貼られた自分の腕を服の長袖で隠した。

「それでは、失礼します。」

先生と看護婦さんは丁寧にお辞儀をすると私の病室から出ていった。

しばらくボケーッとしていた。
ふと時計を見るといつの間にか先生と看護婦さんが出て行ってから1時間も経っていた。私は近くのテーブルにおいてある自分のスマホを取り

プルルルッープルルルッー。

ある人に電話をかけた。

なんか自分でわかるんだ…。

変かもしれないけど。

自分の命が…もう長くないことを…。

ガチャッー。

『もしもーし?』

電話からは愛しい人の声が聞こえてきた。