▶Hidaka.side


高校二年生。特にいいことはないけれどひとつ学年があがり違和感を持つ俺。

“いつも”の校舎の門をくぐって“いつも”の下駄箱につく

そして“いつも”のように上履きに履き替える

既に聞きたくないような黄色い声が少々聞こえるがこれも“いつも”の事だ。

新しいクラスに入るともっとその声が大きくなる。

「きゃー!陽集くんとおなじくらすだぁっ♡」
「おはよう!陽集くんっ!」
「ねぇ、放課後空いてるー?」

どいつもこいつも俺を顔しか見てない奴ばかり。
でもまぁ、俺は“いつも”のように爽やかな感じを演じる。

「おはよう!皆!」
ニコッと笑えば皆が顔を赤くする

そのうちに俺は空いている席に座る。
予鈴ギリギリと言うことで席はあまり空いていなかったから取り敢えず窓側の席を選んだ。

しばらく外を見ているとさっきは気づかなかったがグラウンドには桜の木がいっぱい咲いていた。

(きれいだな。)

すると窓が空いていたせいか桜の花びらが教室に舞い込んでくる。

俺は急いで窓を閉めたが髪の毛にいくつか桜の花びらがついてしまった。



一度机に座ってから花びらを取る作業をしていると、二人の女の子が走りながら教室に入ってきた


サイドテールの少女…富谷遥音は窓側の一番前へ。
もう一人のロングストレートの子…小林瑠璃乃は俺の隣に座ってきた。



俺が頬杖をついて少しすると俺の方に視線を感じた。
横を向いてみるとパチッと目が合う




そして小林さんは顔を下に向けて手で覆っている。
微かに頬が赤く染まっているのが分かった。


(……きっとこの子も顔しか見てない。あいつらと一緒なんだろうな。)

心の中ではそう思っているが一応挨拶だけはしておこうと思って



「あのさ。その…よろしく。」
と一言だけ言ってみた。
すると、
「うっうん!こ、こちらこそよ、よろしくおねがいしますっ」
と言う変な返事が返ってきた。


よほど緊張しるのかな。目が泳いでる。


その姿があまりにも面白かったのでつい笑ってしまう。


「そんな緊張しなくていいよ。暫く席替えしないと思うし、隣同士仲良くやっていこう」

「は、はいっ!」


まだほんのり頬が赤い君をみて“かわいい”なんて思ってしまったのは内緒にしておこう。



それから他愛のない話をして、先生が教室に入ってきたので一旦ストップ。
‘またあとで’とお互い笑顔で言い前を向く。