「この前はごめん...。」
「私の方こそごめんなさい...
零先輩のこと全然分かってなくて...。」
「俺さ、佳奈にまた戻ろうって言われたんだよね...」
「あ、よかったですね...」
.......................................。
また沈黙が続いた。
なんで黙るのよ...余計つらいじゃん...
教室を出ようとした私の腕を先輩はさっきよりも強く握った。

「断った...。」
私の頭は真っ白になった。
「あれから俺も考えてたんだけどさ...」
「なんで断ったんですか...?」
「中学の時からあいつは俺の自慢だった。
みんなに人気で...」
「なら今だって...」
「俺の自己満足だったんだ...
あいつのこと好きなのか分かんなくて、でもあいつがいないと俺じゃない気がして...」
私の手を握る手の力が弱くなった。
私は先輩の手を握った。強く強く...。


「どんな零先輩だって零先輩なんです。
朝、寝癖ついたまま自転車こいでるのも。
いっつも国語のとき寝てるのも。
誰よりも部活のこと考えてるのも。
全部が零先輩なんです...。」
「薩摩...」
パサッ...
気づいたときには私は先輩に抱きしめられていた...
「えっ...あの...零先輩...?」
「こんな近くに俺を思ってくれるやつがいたなんて知らなかった...」
私は今すぐにでも死んでしまいそうだった。
「先輩鈍感すぎます...笑」
「よく言われる....笑」
私は先輩を強く抱きしめ返した。
「そんなとこも零先輩です。」
「ありがとう...。」