おつまみやビールが運ばれてきた座敷のテーブルで私は事のあらすじを皆に話してみた。




「へー、でまんまと彼女になっちゃったんすか。」


呆れたような顔で私を見る梶野さん。




『…私だってなりたくてなった訳じゃないですよ!』



だって、
クビを切れるとかあんな怖い顔で言われたら断れないじゃない。


そんな重くなってしまった空気をふわりと遮る松原さん。



「でもそんな半ば無理やりでも彼女にしたって事は好きなんじゃない?修ちゃん、花凛ちゃんの事。」





『…はっ?!』





一度も想像していなかった事をさらりと話した松原さんに
もう少しでお酒を吹きかける所だった。




「だってそうでしょ。
嫌いな子にそんな事しないだろうし。修ちゃん。」





「修ちゃんとか大先輩に向かってよく言えますよね。」


梶野さんは色々な人にうんざりって様子でトイレに席を立った。







好きって…


そう考えた瞬間に思い浮かぶのは初日の爽やかなイメージ。


"おはよう"


そんな風に片手を上げる彼を、本当は何度も好きだと思った。




…でも

夜のオフィスで見た彼の顔は
私のイメージをガシャンと音を立てながら壊した。





好きだったよ…?


でも今は嫌い…




のはず。



…私、

いつ好きじゃなくなって、
いつ嫌いになったんだろう。








彼のネクタイを緩める姿も、



後ろから自分の手に重なるマウスを操作する綺麗な手も…





全部、

大好きで…







変わらず今日も眺めてた。