その日は一日中ずっとイライラしちゃって、
なかなか仕事も捗らなかった。



パソコンの画面とにらめっこしながら溜息をつく私を見兼ねて
伊藤さんが後ろからひょこっと顔を出した。




「花凛ちゃーん?
大丈夫??魂抜けてるよー?」



『…抜けてません。』




伊藤さんも梶野さん、松原さんと同じく少し先輩。


まあ一ノ瀬さんはこの人達と比べても断トツの成績を誇ってるから
頭が上がるのは本当に一部の人間だけど…。


一ノ瀬さんの事をまた思い出してしまった自分にムカついてしまう始末。



「今日さ!
春樹と梶野と大野も連れて飲みに行こーよ!」



そう、明るく太陽みたいな笑顔を向けられた。


ちなみに、【春樹】とは麻木さんの下の名前だ。その他に

梶野 遥…松原奏多…伊藤 夏樹

と、それぞれの名前はやっと覚えたばかりなのだ

『…私は大丈夫ですけど…
皆さん忙しくないですかね?』






確か梶野さんと松原さんは一緒に企画立てるらしくてだいぶ忙しいと思うんだけど。





「俺はとりあえず大丈夫っすよ。」




隣の麻木さんは快く"宮田 花凛を慰める会"への出席を受け入れてくれた。


やっぱり優しいな、なんてジーンとしちゃった


のだけど…




「嫌ですよ。
こんなダメ女と飲んだらこっちまでダメになっちゃう。」


初日から私のコーヒーをあからさまに不味そうに飲んだ梶野はしぶとかった。





「いいじゃーん!
花凛ちゃん可愛いし!ね!」

一生懸命梶野さんを巻き込む
伊藤さんを軽く睨みながら首を振る梶野さん。



そんな空気の中、



「俺は行こうかな…」


松原さんがそう言ってくれると、

グチグチ言いながらも梶野さんも渋々行くと言ってくれた。


やっぱり二人、仲良いんだな…


そう思いながら二人を眺めると仕事の繋がりを大事にしたいなって思えた。