送信ボタンを押す。
―おはよう、瑞希お兄ちゃん!―
―今日も大好き!―
―凛より―
上記のような、短い文面を押して携帯を閉じる。
「さて・・・と。」
瑞希お兄ちゃんと最後に会ってから、数日が立っていた。
彼と会えたなくなった私は、瑞希お兄ちゃんへのモーニーングメールが日課になっていた。
瑞希お兄ちゃんからもらった携帯の電源を落とす。
そして、ポケットに入れる。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい、凛。」
今日も私は学校。
お母さんに見送られ、玄関から出る。
外は良く晴れていた。
(日焼け止めを塗っておいてよかった・・・)
瑞希お兄ちゃんのいいつけを守り、少しの間だけ凛道蓮を封印した。
今のところ、変な人が家の周りをうろついていたりしない。
いたずらメールも届いていない。
平和。
(・・・・・・・だけど、瑞希お兄ちゃん不足・・・・)
寝不足もつらかったけど、瑞希お兄ちゃんにしばらく会えないのはつらい。
気持ちは沈むけど、一時的なこと。
ただ、それだけ。
「お姉ちゃーん!」
ガシッ!
「へっ!?」
警戒していたつもりだけど、不意打ちだった。
(気配もなく、私の背後に立っただと!?)
しかも、肩叩かれた!?
〔★凛は動揺している★〕
思わず、戦闘態勢で振り返れば、
「はっはっはっはっ!あの~あゆみが丘学園はどっちかのぉー!?」
「へ!?」
(デカっ!?)
眼鏡型のサングラスをかけた背の高い男が立っていた。
私の肩を掴んで立っている。
(え!?これが刺客!?私用の刺客!?)
でも待って、あゆみが丘学園って・・・・
「・・・・うちの生徒?」
「おお!?君、あゆみが丘学園か!?」
「そうですけど・・・?」
「おーおー!確かに!チェックのスカートの、かわぇぇ制服や!」
「はあ・・・?」
なにこの人?
「あ~わし怪しゅうないで!実はな~あゆみが丘学園探しとんねん!どこや!?」
「え!?えーと・・・この道をまっすぐ行って、左に行くとありますが・・・」
「おお、ほんまか!おおきに!」
説明すれば、肩においていた手上げる。
その手を振りながら、去っていく男。
そんな大男の背中を見ながら思う。
(田渕の手の者じゃないよね・・・?)
ジャージ姿で、鼻歌を歌いながら去っていく大男。
もしかしたら、不審者かもしれなかった相手に、教えたことを少しだけ後悔した。