「すみません、佐々木さん!休憩室、貸して下さい。」
「え!?そ、それはいいけど・・・」
「おい、瑞希!」
「烈司は黙ってろ。こい、凛!」
「え!?え!?」
そう言うと、腕を掴んで従業員出入り口に行く。
そのまま入るかと思えば、
「みなさん、お騒がせしてすみませんでした!!」
扉の前で気をつけ!をすると、深々と頭を下げた。
「あ・・・」
「お前も謝れ、凛!」
そう言いながら、私の頭に手を乗せて下げさせた。
(そ、そんなことしなくても、私、ちゃんと謝るよ?)
弁明したかったけど、言っていい雰囲気じゃなかったので言わなかった。
代わりに、違うことを言った。
「ご、ごめんなさい!僕が余計なことしたので・・・!だから、ここのコーヒーも、瑞希お兄ちゃんも嫌いにならないでくださいっ!!」
「凛たん・・・」
「って!?コラ、凛!何言ってる!?」
「だ、だって~お兄ちゃん悪くないから・・・うっうっ・・・!」
「コ、コラコラ、泣くな!」
「泣かしたのは瑞希じゃんかー?」
「烈司!?」
ギョッとしながら言う瑞希お兄ちゃんにそう言ったのは、ヘビースモーカーのお兄さん。
「凛たんは、大事なお兄たんを守ろうとしただけだろう?」
「れーじさん・・・」
瑞希お兄ちゃんを見ながら、私を弁護してくれた。
かばうように言う。
「悪いのは、さっきのお客さんだ。迷惑してたのは、みんな知ってる。」
「烈司さん・・・」
そう言ってくれたのは、彼だけではない。
「そうよ!瑞希君、あんまり弟君を怒らないであげて。」
「あたし達気にしてないから。」
「あいつら、調子に乗り過ぎだったしさー」
「凛君だっけ?許してやってよ!」
「これぐらい、来るのやめるとかはないぜ?」
「当然よ!明日もコーヒー、飲みに来るから。」
「お客様・・・・」
「み、みなさん・・・」
その場にいたお客さん達も、私をかばってくれた。
「瑞希君、お客様達もこう言ってるからさ~」
ゆっくりと近づいてきたカズ君さんに、瑞希お兄ちゃんの表情が変わる。
「それはそれ、これはこれです!」
「あ、瑞希君!」
「こっちだ、凛!」
「お、お兄ちゃん~!?」
みけんにしわを寄せた顔で、私を引っ張る瑞希お兄ちゃん。
今回ばかりは、なぜかトキめかなかった。
〔★正しい判断だ★〕