「新規のお客様に、余計なこと言わないでくださいよ・・・!」
「なにそれ?話すぐらいいいじゃない。」
「そうよ!助けもしないのにさ~」
「助けないって・・・?」
「あ、いえ、なんでも~」
「「なくない!」」
今度はお姉さんたちが、カズ君の声を遮って言った。
「この坊やは、お店が静かな理由を聞きたいって言ってるのよ?」
「聞えてきた薄汚い罵声もね!教えるぐらいいいじゃない?」
(坊やって・・・・)
〔★子ども扱い決定だった★〕
大人のお姉さんから見れば、坊やかもしれないけど・・・
(さっきみたいに、小学生だとは思ってないよね?)
まぁ、男装してるのがバレてないからいいけど・・・・
「いや、困りますよ!あまりしゃべられると~」
「しゃべりません。」
慌てるカズ君に私は言った。
「僕は、コーヒーを飲みに来ただけです。ここのお店が困るようなことを、言いふらしに来たんじゃありません。」
(というか、瑞希お兄ちゃんの職場の悪い噂を、立てるわけないじゃない!)
〔★凛は確信を持って言っている★〕
「とはいえ・・・お店のスタッフさんが嫌がるなら、僕も追及はしま・・・・」
「さっきからうるせぇよっ!クソ女にクソ男!誰も、お前らには聞いてないだろうっ!?」
「はぁ~仕事中だからやめろだ!?こっちも、遊びで来てんじゃねぇよ、ボケ!!」
ガン!ガンガン!!
私の声に被るように、罵声と机をたたく音。
「きゃ!」
「ひっ!?」
「きゃあー!?」
あまりの音量に、他の席から悲鳴が上がる。
「見たか今の?止めようとしたスタッフに怒鳴り散らしたぞ?」
「あの子可哀想~女の子でも、ようしゃしないって、最低よね~」
「いつもそう!数人がかりでも、立ち退けないよね~」
そのあとで聞えてきた、他の客たちの会話。
「・・・・追及はしない方向ではいますが、なんなんですか、今のは?」
「ははは・・・言わないわけにはいかなくなりましたね~」
私の問いに、トホホな顔でカズ君は告げる。
「実はあれ・・・うちのスタッフを口説きに来てるお客さんなんです。」
「はあ!?どう聞いても、借金の取り立てと変わりませんが!?」
〔★愛を語る口ぶりではない★〕
「そーなのよ!毎回毎回、来るたびに口説いてさ~嫌になるのよね~?」
「ホント、あたし達みたいな一般人はいい迷惑よ!」
「お姉さん達・・・常連さんですか?」
話しぶりから察して聞けば、首を縦に振りながら教えてくれた。