単車を止めた時、声をかけられた。
「あの!」
「あ?」
凛の様な気がして振り返る。
けど、いたのは、凛じゃなかった。
(ガキ?)
小学生低学年くらいの子供。
相手の目線まで身をかがめると、笑顔で聞いた。
「どうした?迷子か?」
「これ、お母さんが渡してって!」
そう言って、手紙を差し出す。
「お母さん?」
「うん、バイバーイ!」
そう言って、女の子は行ってしまった。
見ていれば、ブティックから出てきた母親らしい女と手をつないで歩き出す。
「・・・?」
(誰だ?)
遠くから見てもわからない。
人の顔を覚えるのは得意だ。
背中だけでも、歩き方であってもわかるが・・・
(覚えがねぇーな・・・?)
単車から降りて、キーをはずす。
受け取った手紙を見る。
裏返しても、何も書いてない封筒。
キレイな花の模様があるだけ。
(カミソリは・・・入ってないな。)
嫌がらせか?と警戒しつつ、安全そうなので開けた。
「うらぁ!」
「なに!?」
手紙に集中しかけたところ、背後から角材。
振り下ろされ、間一髪でよける。
「あんだテメーら!?」
「スネーク。」
(スネークだぁ!?)
そんな声と一緒に、覆面をした数人の男達が俺を囲む。
そして、奴らが手に持っていた消火器の口を向けてきやがった。
シュー!!
「なっ!?なにしや・・・・!?」
油断して、吸いこんでしまった煙。
それで、ハッとする。
(消火器じゃねぇ!?別の煙か!?)
「くっ・・・・!?」
そう思わせるだけの煙の効果を持っていた。
「うっ・・・!?」
(頭が・・・!?足が、立てねぇ!?・・・意識が・・・・!)
「と、ぶ・・・・!?」
ドサッ!
そのまま、体が地面に沈む。
かすれる視界と、動かなくなっていく身体。
(誰だ!?俺にこんな真似・・・・!?)
考えなくてもわかった。
(田渕・・・・!?)
俺に性欲を持ってる迷惑な不動産屋の親父。
まぁ、その正体はヤクザだけどな。
(凛がダメだったから、直接俺のところに来たのか!?)
「う~わっ!けっこう煙、広がってるじゃん~!?」
(・・・誰だ?声が若い?田渕じゃない・・・!?)
そう思いながら目だけで見上げる。
いたのは、見たことないガキ。
凛と変わらないぐらいの男だった。