「おい、坊や!」



エンジンがかかり、のろのろと動き始めたパトカー。

その助手席から、顔を出したおじさんが私に言う。



「瑞希に伝えとけ!田渕の件は難しいってな。」

「え!?おじさん、ストーカーのこと知ってるの!?」

「けっ!ありゃあ、有名な色狂いだからな。」



私の問いに、タバコを口にくわえながらおまわりさんは言った。



「パクってもいいが、俺は非行した子供専門だからな~成人した元子供まで面倒見きれねぇーよ。」

「国家権力のくせに、薄情ですね!?」

「なにが薄情だ!こうやって知らせてやってるのは、かなりの親切だ。じゃあな!」

「あ、ちょっとおじさん!?」

「ジュース、ごちそうさん!」



ブオーン!





私の言葉を無視して、パトカーはスピードを上げて走り出す。




「ちょ、なにが専門外!?子供専用!?これだから、横つながりの少ない縦社会は~~~!!」




文句を言ってみるが、返事はもちろん、おじさんが帰ってくる様子はない。



「あーあ・・・行っちゃった・・・・」



言うだけ言って、去っていく国家公務員。





(心配して教えてくれたのは良いけど・・・・・)





「いつの間にジュース、パクったのよ・・・・?」





去ってから気づく、飲み逃げ。



〔★警察らしからぬ行為だった★〕




「しかも、自分が好きな物を選んでボタン押してたし・・・・」



ゴミ箱へと消えたのは、カフェイン強めのコーヒー。



〔★ちゃっかりしていた★〕





「はぁ・・・情報料にしたとして、それでいいとしようか・・・」



呆れる思いで、小銭口にたまっているコインをもう一度入れる。

周りや背後に人がいないことを確認してから、今度こそ私がほしい飲み物をプッシュした。