風がよく通る場所に彼女はいた。
校舎を見わたせる屋上は、学校で一番落ち着くところ。
雨が降った日は最悪だが、梅雨の時期は終わった。
日焼け止めをいつも以上にぬる、暑さをしのぐ季節になっていた。
「カンナ。」
屋上のフェンスにもたれかかっていれば、名前を呼ばれた。
少し前まで学ランだったのが、半そでシャツに変わっている。
「んだよ、大河か。」
やってきたのは幼馴染で、爆裂弾リーダーの円城寺大河。
これに相手は、彼女は、高千穂カンナはそっけなく答える。
そんなカンナの態度を気にすることなく、大河は彼女の隣へと移動した。
「おめーよー、あれでよかったんかよ?」
「なにがだよ。」
「とぼけんな。凛道からの誘いだ。」
カンナを見ることなく言う大河に、カンナも相手を見ずに言う。
「あたしの勝手だ。」
「おりゃあ、てっきり、オメーが龍星軍に入ると思ったぜ。」
「うるせぇな。」
「オメー、龍星軍の先輩らに憧れてんだろう?なんで、受けなかった?そうすりゃあ―――――」
「だったら、お前だけ受ければいいだろう大河ッ!!」
大河の言葉に、カンナがキレる。
ギロッと大河をニラミながら言った。
「一番龍星軍に、真田瑞希先輩に惚れこんでんのはオメーだろう、大河!?いちいち、あたしを巻き込むな!」
「だからって、凛道をぶん殴っていいのかよ?」
「っ!?」
それでカンナが黙る。
そんなカンナに、気まずそうな顔で大河が言う。
「あいつ・・・凛道は、俺の中じゃクソ野郎だ。俺が龍星軍になれなかったってことで、俺を誘ったんだろう。もしかしたら、一緒に仲良くやれば平和的になるとでも思ったのかも知んねぇ。あるいは、何も考えずに言ったガチの大馬鹿。」
「消えろ、大河。」
「俺がお節介することじゃねぇが、オメーの返事のしかたは――――」
「テメーが消えねぇなら、あたしが消えるっ!!」
そう言うと、足早に大河の隣から離れる。
「カンナ!」
「うるせぇ!あたしよりも、テメーがどうするか考えやがれ!」
ガンっ!と乱暴にドアを閉めると、カンナは行ってしまった。
カンカン!と乱暴に降りていく足音は、彼女の心境を語っているようだった。