瑞希お兄ちゃんの声をBGMに、目的地へと到着する。
「お兄ちゃん、つきました。」
キキッ!とブレーキをかけながら止まる。
対岸の向かい側に、それらしいお店があった。
〈よしよし、スタートラインには立てたな?〉
「でも・・・あんまり、ファーストフードを食べる雰囲気のお店じゃないです・・・」
ハッキリ言って、大人がお酒を飲む場所だ。
〈『バー』だから、そんなもんだろう?どうだ、外に見張りはいるか?〉
「見張り・・・・」
道を挟んだお店を見る。
不規則で動く通行人とは別に、ジッとして動かない者がいた。
「あ。入口に2人立ってますよ。」
〈得物は持ってるか?〉
「武器は~・・・・持ってないともいます。なんか、ニヤニヤしながらしゃべってますねー」
〈SHIELDか、蛇の目かわかるか?〉
「え?違いが分からないです。」
〈蛇の目なら、ヘビのタトゥーが入ってんだけどな?〉
「タトゥーですが・・・・ここからじゃ、見えないですね・・・」
目を凝らしてみるが、見えない。
(そういえば、前に・・・・タトゥー絡みで何かのトラブルに遭遇したような・・・?)
〔★凛は何かを思い出しかけている★〕
(おっと!いえない、いけない!今は可児君を助けるとことに集中しなきゃ!)
雑念を振り払い、電話口の瑞希お兄ちゃんに聞いた。
「近づいて、見た方がいいですか?」
〈待て待て。じろじろ見ながら近づけば、危ないぞ。怪我するぞ!〉
「でも、入り口にいるので、どちらにしても近づかないと・・・」
〈それもそうだが・・・じゃあ、客のふりして入れ。念のため、バンダナはとれよ。〉
「え!?なんで!?」
〈バンダナで口隠してる=凛道蓮ってことになってるからだ。〉
「ええ!?それは困ります!」
〈そうだろう、はずせよ?〉
(そうじゃないです。)
瑞希お兄ちゃんが言う困ると、私の困るは違う。