「あの、上がっておいて今更なんですけど、学校的には怒られたりしないの?」


そう。

私と椎名先生は生徒と教師だ。

成り行きとはいえ、これはあまりよろしくないのではと、さっきから気になっていた。

先生はグラスに飲み物を注ぐと、それを両手にリビングにやってくる。

そして、私の分をガラステーブルにそっと置くと……


「異性の生徒を家に上げる。バレたら減給か停職か……だな」


想像するも恐ろしい、もしもの話を口にした。


「か、帰る! 帰ります!」


自分が先生にとんでもない迷惑をかけてしまうのが嫌で、慌てて立ち上がる。

すると、先生は自分の分のグラスに口をつけてから向かい側の1人掛け用のソファーに座って。


「もう上がったんだ。いつ帰っても大して変わらないだろ」


冷静な態度でまた一口喉に流し込んだ。


「そ、そうだけど……なんか、珍しいね」

「何がだ?」


先生はグラスをガラステーブルに置いて、私に視線を移す。


「先生って真面目でしょ? こういうの、絶対許さない人かと」


正直に話すと、椎名先生は小さく困ったように笑った。