1時間後。
私は葛城さんの行きつけだというイタリアンレストランにやってきていた。
奢りだから何でも好きなものを頼んでいいよと葛城さんに言われたけど、イタリアンなんて普段あまり食べたりしないから、メニューを見ても戸惑うばかりで。
とりあえずハズレのなさそうなパスタにでもと考えていたら。
「特に好き嫌いがなければ、適当に頼んでシェアするか?」
ボックス席の向かい側、葛城さんの隣に座る椎名先生が提案してくれた。
すると、葛城さんがそれもいいねと快諾し、オススメだというボンゴレ・ビアンコとカラマリ、シーザーサラダを注文。
デザートにはティラミスも頼んだのだけど、オススメというだけあってどれもとても美味しかった。
特にティラミスは絶品で、ほっぺが落ちるという例えが初めて理解できた程だ。
感激している私の向かいで、葛城さんと椎名先生はホットコーヒーを飲みながら会話をしている。
「でさ、この前見に行ったらいいの見つけてさ。ちょっと高いけど性能いいしついにゲットしちゃったわけ」
「盗撮だけはするなよ」
「OK! 要だけにしとくわ」
「やめてくれ」
どうやら、葛城さんは先週末に欲しかったデジタルビデオカメラを購入したらしい。
それにしても、この2人の会話はコントみたいだ。
椎名先生がツッコミで、葛城さんがボケ。