あまり先生に甘えすぎてはいけないと、私は戸惑いつつも「ないです」と答えた。
でも、ポーカーフェイスが得意じゃない私は、せっかく笑んだのに眉が力なく寄ってしまっていて。
「宮原はわかりやすいな」
先生は少しだけ口の端を上げた。
どうやら簡単に見抜かれたようだ。
でも、先生はそれ以上何も聞いてはこない。
また私に背を向け、採点に戻っただけ。
だから私も再び問題に視線を落とす。
すると、先生はペンを置いて立ち上がり、少し待つように私に言うと準備室を出ていった。
そして数分後──戻ってきた先生は。
「これ、嫌いじゃなかったら」
言いながら、座ったままの私に黒い長方形の箱を手渡した。
リボンが括り付けられていて、私はそれを受け取り瞬きを繰り返す。
「私に?」
「ああ」
先生は頷くと、また椅子に座り採点の続きに取り掛かった。