『そういえば、もうすぐ大会なんでしょう?』


『え?大会って、何で?』



確かに一週間後大会がある。


でも俺は出れない。出れるのは、一軍の先輩達だけだ。



『櫻川のテニス部なんですよね?うちの兄もなんです』



櫻川のテニス部だってことは、俺の制服とラケットバッグを見ればわかることだ。


でも、今気になるのはそれじゃない。



『兄って?』


『櫻川のテニス部部長、春川シュンは私の兄です』



ぶ、部長っ⁉︎



『え……ホントに?』



あのインテリ部長が、春川さんの兄貴?


そういえば部長も“春川”だ。


言われてみると、若干目元が似てる気もする。


何で気付かなかったんだろう。



『面白い一年が入ってきたって言ってましたよ。洗礼受けてどう変わるか見物だって』


『部長が?』


『あの人、分かりにくいから勘違いされることが多いけど、良いところもあるので。あれでも櫻川テニス部のこと大事に思ってるんですよ。だから、勘弁してあげて下さい』