俺は春川さんの手を掴むと、『行こう』とだけ言って、彼女を引いて走った。


『え?え?』と春川さんの戸惑った声と、集まった女子から『きゃー‼︎』と黄色い声が聞こえる。



やっぱり失敗だった。恥ずかしいにも程がある。


いくら早く確実に会いたかったからって、女子校の前で待つなんて浅はかだったんだ。



右手には春川さんの手。


左手にはピンク色の傘。


後ろを振り返ると、必死に俺に合わせて走る彼女。


前髪が風で靡く。


額が見え隠れして、そのでこっぱちな感じも可愛いと思った。


目が合うと、春川さんは意味もわからず走らされているのに、ニコッと白い歯を見せて笑った。


走りながら、その笑顔に心臓がまたもや弾んで見惚れてしまう俺。



ああ、そうか。


俺は彼女が好きなんだ。


あの雨の日に出会った。


たった数分のことだったけど、彼女は俺の中にドンッと居座るようになって。


今日、彼女の顔を改めて見て確信した。



ーーーー俺は春川セイラが、好きなんだと。