「あの……吉川さん」
席についてリュックを置き、楓たちのところへ行こうとした時、控えめに声を掛けてきた女の子。
その人物に気付き、あっ……。 と、思わず身構えてしまう。
ーー「吉川さん、これ、どういうこと?」
写真を見せられた光景が蘇る。
「ごめんなさい。 九条先生のこと……。 よく知りもしないのに、勝手なことして」
「…………」
「写真、後輩からもらったんだけど、それを勝手に広めたのはあたしなの。 本当ごめんなさい!」
頭を下げられて、言葉に詰まる。
写真そのものを撮ったのは、知らない人だったんだ。 ただ、この学校の子なら凛ちゃんの顔は知ってるもんね。
彼女の謝る姿を目の当たりにして、なんだかホッとした。
その時は驚いて、どうしようもない気持ちになったけれど。
黙ってるあたしに、おそるおそる視線を送られて、あわてて笑顔を返した。
「あはは、ごめん、ホッとしちゃって。 写真、九条先生だ〜!と思って撮ったんだよね。 悪意みたいなもの……なかったんだと思って、安心した……」