「あ。なるほど…
だけど円木くんなら一緒に行ってくれる女の子たくさんいるだろうに…」

「女子は近寄ってもこない。たまに来る奴はその…ちょっとびっくりするタイプのやつだな。」

円木くんは苦笑しながらぴかぴかした黒い自転車のスタンドを蹴った。
夕日に照らされた彼は何故だかキラキラして見えた。

「びっくりする?」

「シャーペンをくれとかそういう…酷いときは盗まれたりして。」

「うわぁ…人気者って大変なのね…」

「人気者なんかじゃない。怖がられてるんだ。
その人たち以外に、だけど。」

少し寂しそうな気配に、元気つけてあげなきゃ。そう思った。

「そんなことない。
私さっき出会ったばかりだけど、一度も円木くんを怖いなんて思わなかったよ?
作業してるとき何も話さなかったから少し気まずかったけど、話してみると楽しいし。」


まくし立てるようにそう言うと、
円木くんは決まりが悪そうに呟いた。

「集中すると何もしゃべらなくなるんだ。」

「そうなのね。」

私たちは顔を見合わせて笑った。