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秀と初めて話したのは10年前の秋。
私たちはまだ高校1年生だった。

たしかあれは放課後だった―
私が一人、生徒会室でプリントを綴(ト)じていたときだった。

次の日にある生徒総会の為に用意しなくてはならないのに、
間に合いそうになくてとても焦っていた私は、
ガラガラと扉が開く音がしても、
そちらを向く余裕なんてなかった。



「――あの。」

「どうしましたか…ごめんなさい、今先輩はいません。」
私は一分一秒も惜しくって、振り向きもせずにそう言った。

誰か先輩に用があって来たのだろう。
いないことが分かったらすぐに出ていくだろう。
と思ったのに、
その気配はずっとそこにあって。