「秀。」

「なんだよ。」

「ありがとう、大好き。」

微笑むと、すぐに口をふさがれた。
一瞬交わった唇はすぐに離される。
そのままゆっくりとソファに倒された。

「わかってねーな」

「ん?」

「俺がなんでその指輪を買ったか。」

「き、記念日だからじゃないの?」

この体勢で話すのは正直恥ずかしい。
今私、絶対顔赤いし。


「男避け。絶対外すな」

「―――っ!」

「わかったか」

「わかった」


そしてまた秀の唇は降りてきた。
秀の舌が口の中に侵入してきたとき、体が震えた。

「しゅ、しゅう…っ」

「受け取ってもらえないかと思った」

「な、んで、っ」


なんで秀はこんなに余裕なんだろう。
私は秀との初めての深いキスでの恥ずかしさと…息切れで、まともに話せない。

「高校のころ。酷いことしたから。」

「ば、か。」

「――…なんでだよ」

秀の顔が、離れる。

「秀の、ばか。
私…酷いことされたって、思ってないよ。」

秀の真っ黒な髪に指を通す。
さらさらと、指の間から髪の毛がこぼれていく。

「もしかして今まで距離あけてたのも?」

「ああ…日和の側にいていいか、迷った。」

「…ばか。あれは私が選んだことだから。」

「そっ…か――。」

そのとき秀が寂しそうな顔をしていたことに、
私は気づかなかった。