「日和、手だして。」

「こう?」

片手の甲を見せると、ちがうと言うように秀は首を振った。
そして私の手をひっくり返すと、

「やる。」

そこに小さな白い箱を乗せた。
この感じ…
「アクセサリー?」

「開けてみれば」

「う、うん!」


箱をゆっくりと(内心焦って)開けると、指輪が入っていた。

「え!?これ、くれるの!?」

「うん。」

「なんで!?いいの!?」

「――記念日、だから。」

言われてみれば、今日は、付き合って半年くらいな気がする。
付き合っている感覚がなくて、すっかり記念日の概念が頭から抜け落ちていた。

覚えてくれてたんだ。

「……ありがと…」

指輪はシンプルなデザインで、小さな赤い石がついている。
これなら仕事中もつけていられそうだ。


「この石の意味さ…」

「うん。」

「―――忘れた。」

………………は?


「わ、忘れたぁ!?」

「自分で調べろ。」

「なんじゃそりゃあ!」

「インカローズって石だからさ。」


ふざけ合いながら、ふと思った。
こういうパワーストーンを買うとき、カタカナの聞き慣れない石の名前を覚えているのに、意味を忘れているってことは珍しいんじゃないかな?