「まあそう怒るなって」

秀の大きな手のひらが、私の頭にぽんっと乗る。
それだけで私は思わず黙ってしまう。

秀がソファに腰をかけ、こちらを向いたので、私も秀を見つめた。
2人で見つめ合っていると、時が止まったように感じる。

私、ずっと秀とこうしたかった。
隣を歩いたり、食事をしにいったりしても、秀の瞳はいつもどこか遠くを見ていた。

でも今は、視線が絡み合う。
それが、何よりも強く、私の心を揺らす。
「秀――…」

「日和、引かないでほしいんだけどさ」

「ん?」

秀が下を向いて膝に手をやっている。
なんだかひどく焦っているみたい。

「どうしたの?」

「さっき、日和が雑貨屋にいるとき、側を離れたろ。」

秀が“ざっかや”って言うのがなんだかおもしろくて、シリアスなムードを無視して笑いそうになる。
でも雑貨屋さんって言ってもきっと笑ってしまうと思う。――可愛い。なんて。