しばらくして、秀はまた息を切らしながら走ってきた。

「待たせてごめん…本当ごめん…。連絡先分からなかったから…」

そう言ったあと、はっとした顔をする秀を不思議に思いながら、私は笑った。

「交換しよっか。」

大体今まで交換してなかった方がおかしいのだ。
出掛ける時間や場所はいつも前のおでかけのときに言われて、
言い逃げみたいにすぐに秀がその場を去ってしまって。

「でも…」

「いや?」

「ううん。だけど…連絡が自由にできたら、一条は出掛けるのを断らない…か?」

「…は?」

なんでそうなる。

「無理やり付き合ってもらってること、本当はすごく気にしてる。申し訳ない。俺の勝手につきあわせて。」

「待って!」

私は大きな声で叫んで、下から秀の顔を覗きこんだ。

「嫌々付き合ってるのは秀じゃないの?
手も繋がないしその…好きとも言わないし。」

「それって、一条は俺を好きってこと?」

文字通りぽかんとする秀。
本当に気づいてなかったのか…なんかショックかも……。
私も一緒に呆然としていると、
秀がきゅっと、私の腕をつかんだ。

「あのさ…もし一条がよかったら……ここ俺の家近いから、こない?
ちゃんと。2人きりで話がしたい。」

私は小さく頷いた。


秀の手のひらが、久しぶりに触れた秀の肌が熱くて、
ドクン、と胸が音を立てた。