久々に話すというのに、秀は相変わらず秀だった。
でも、呼び方と―笑顔が変わってしまった。
一条、と呼ぶし、
笑顔はどこか苦しそうなものだった。
しばらくして、そんな笑顔を見せることも秀はやめてしまった。
前は、無口ではあったけど、その分喜怒哀楽ははっきりしている方だった。
それもなくなってしまったら、秀は一体、どうやって人に自分の気持ちを伝えているの――…?
「あのさ、一条。」
グラスの中の氷がカランと音をたてた。
「ん?」
「今彼氏いる?」
私は一瞬視線を落とした。
隠すほどのことでもないか。
「長いこといない…さっき同期に告白されたのが久々ってくらい。」
「そう…か。」
「秀は?」
「いない。」
そうなんだ。なんだか意外。
特定の人がいないって意味?…なんてケータイ小説の読みすぎかな。
なんて考えていたら。
「付き合わない?」
「え?」
「また、あの頃みたいに一条と話したい。」
とてつもなく大きい動揺の波が私を襲った。
別れてからの秀を私はなにも知らなかった。
きっと色んなことが変わっただろう。
でも不安になる前に、私の口が動いていた。
「私も秀と付き合いたい。」
はっとして秀を見ると、秀も驚いた顔をしていた。
「…って、仕事落ち着いてきたし。独り身が寂しいなって感じてたときだったからちょうどいいなって。」
「そうか。」