「仕方ない、許してやるか。」

おどけて喋っている私だって――私だってそうしてふざけていなきゃ泣いてしまいそうなくらい、秀は綺麗だ。


「どこに行く?…何か見たいものがあるか?」

こんなとき、映画を一緒に見たいとか言えたら…
私が今観たい映画は、全世界が泣いたというあおりの洋画ラブストーリーで。
私たちはロマンチックな雰囲気になるのをなるべく避けている。
お互いに。
だから無理だ。


「そうだなー…うーん…」

「歩きながら考えるか?」

「うん。そうする。」



ちなみにもうすぐ私の誕生日。
もうこんな年だし、期待なんてしてない。してないけれど――。
秀は覚えてないのかな…
そう思うとちょっと寂しい気持ちになる。