でも、それだけなら私ってわからないはず。

「先輩、私の名前を出したの?」

「いいや。
ずっと気になってた。先輩とたまに話してる綺麗な1年生。
だから俺の頭には一条さんしか思い浮かばなかった。」

「…っ」

「先輩のこと忘れられないなら、俺のこと利用してよ。」

「そんな……」

「お礼。してくれるんだろ?」

円木くんはさっとかがんだ。
彼との顔の位置が、一気に近くなる。

それだけで、恋愛偏差値の低い私には赤面もので。
つい、流された。

「…わかった。お願いします。」

「ありがと」

そのまま私の額にキスをして、円木くんはまっすぐに立った。


「じゃあ、秀って呼んで。」

「わ…かった。あ、私の名前…」

「ひより。」

「なんで知って…」

「好きなやつの名前知ってるのに理由がいる?」

「な…っ」

「ひよりからかうの面白い。」



なぜだろう。
その夜の星を、今でも私は覚えている。