【もう我慢できません。疲れました。
 私が死んだ理由は全てここに書いておきます。
 死んだら呪い殺します。そして、普通に死ぬ気はありません】

 ホームページには遺書とともに、いじめを行っていた者の名前と顔写真も公開されていた。同時に少女は、自分の最後の姿を固定カメラで写して、映像を流し続けていたのだ。
 前代未聞の公開自殺事件。警察は慌ててそのホームページを閉鎖したが、爆弾のように縦横無尽に広がった情報は、一夜で数万人という膨大な閲覧者を残してしまった。
 そしてその後も、警察がとめられないほどの騒ぎが続いた。
『最高の復讐方法だよな。加害者も罪を自覚しろ!』
『確かに虐めなら普通に死にたくない。私も多分やる』
『目立ちたがり屋もここまできたか……』
 ネット掲示板の加害者、被害者に対する書きこみは、一週間たっても一日千件を超えていた。
 更に罵倒は学校の教育管理不足から教師、いじめに加わっていたクラスメイト、加害者の両親にまで飛び火した。
 虐め撲滅キャンペーンと謳い、いじめを受けた者が通っている学校、いじめをしている者の名前、担任名を公開するサイトまで現れた。
 そして公開自殺から二週間後――公開自殺した少女をいじめていたとされた加害者のひとりが、自室で首を吊っているのが発見された。

【死んだらみんな呪い殺します。そして、普通に死ぬ気はありません】

 それは、公開自殺をした少女の復讐が遂げられた瞬間でもあった。
 公開自殺をした少女の後を追うように自殺した加害者の少女も、彼女と同じように遺書を残していた。

【お母さん迷惑かけて御免なさい。責任を取って死にます】

 遺書は切り取られたメモ帳の断片に紺色の文字で綴られ、何もない机の上に一枚だけ、申し訳なさそうに置かれていたという。
 普段散らかっていた部屋が、奇麗に整頓されていたという話だった。