「どうする? 俺たち三人の名前か……相当の難問だぞ。これは」
「いいんじゃない適当で……都市伝説づくりなんて、そんなもんだからさ」
 都市伝説作りの張本人は他人事のように、のほほんと答えた。
 都市伝説を創作していた部員は毛利竜也(たつや)だ。
 彼は言葉も終わらぬうちに、カバンから菓子パンを取り出してかぶりついた。彼の弁当の量は半端ではない。それでも間食するのは、横に大きな体を維持するためにある。
 そんな彼の仇名は『もりりん』。名前と容姿を絶妙にブレンドしたものといえるだろう。
 馬鹿な論議に裕貴は呆れたような息をつくと、今朝の新聞を開いた。
 十一朗も知っている。彼女の習慣のひとつだ。話題になりそうな事件や事故を見つけるためである。
 そして、ひとつの記事に目を留めて新聞を捲るのをやめ、
「都市伝説っていえばさ……もう十八件目か。自殺屋事件」
 巧みに話題を切り替えていた。
 自殺屋事件――それは、ある中学生が、いじめを苦に自殺したことからはじまった。