「どう思う? 自殺屋っているのかな? 犯人がいるとしたら、どんな人物なんだろう」
 裕貴が部員全員の意見を求めるように見回す。
 事件が起きればプロファイリングで犯人像の予想やエトセトラを考えたり……それが、ミス研部の活動の一つになっている。
 裕貴の巧みな話術ではじまった本題を聞きながら、もりりんが牛乳パックにストローを差しこんだ。
 口の中にある菓子パンを、一気に胃の中に流しこむつもりなのだろう。音を立てて中身を勢いよく吸いこむと、大量の牛乳を含んでから、ごくりと飲みこむ。
「頭がいいのは確かだよね。世間を震撼させたし、公開自殺もなくならないと思うよ……」
 言って、もりりんはクリーミィプリンを取り出した。食べるのも話すのも一緒の彼を見ながら、呆れたようにワックスが両手鉛筆回しの妙技をはじめる。
「俺は相当の暇人か、金の亡者だと思うね。無償で自殺幇助なんてやばい真似できないって! 絶対に依頼者から大金をもらってるんだよ」
 どんな時にもワックスの発言は自信に満ちている。鉛筆から目を離しているのにも拘らず、最後まで高等技をやり切ってしまうのだから、そこは感心だ。
 ワックスは鉛筆をペンケースにしまってから、十一朗を見た。
「自殺幇助ってどれくらいの罪だっけ? 刑事の息子のプラマイなら分かるだろ?」
 望まない話題に加えられてしまった十一朗だが、やはりこれも部長であり、刑事の息子であるという理由から答えるしかない。
「自殺幇助っていうより、この場合、嘱託殺人に近いかな……本来は六月以上、七年以下の懲役または禁錮だけど、これだけ大きな事件になると大幅な改正もあるかも」
 自殺幇助は自殺しようとしていた者に、自殺を容易にさせてやったりする行為をいう。頼まれて毒薬を渡したりする行為がそれだ。
 対し、嘱託殺人は殺してくださいと言われたのを理由に殺す行為をいう。それらを総称して自殺関与罪というのだが、殺人罪よりは遥かに罪が軽い。
 が、今回は多分違うだろうと十一朗は踏んでいた。