この国では、異性に自分を紹介する際に、男性が左手を差し出し女性はその上に右手を乗せる。
そして、軽く手の甲にキスをする・・・というのが礼儀のひとつだった。
もし女性が手を差し出さなければ、その男性をあまり良く思っていないとみなされる。
・・・置いてくれない。
まさか。
フランは動揺する。
それもそのはず、フランは自分の容姿には自信があった。
女性に対しての対応も悪くない。
現にフランは女性からの人気が高かった。
今まで断られる事などなかったのだ。
目を見開き、固まるフランをモールは見て、はっと気付く。
「フラン殿、申し訳ないね。この子はその礼儀作法を知らないんだ」
そう言うと、ルリに耳打ちをする。
どうやら礼儀を教えているようだ。
聞き終えたルリは顔を真っ赤にして首と手を大きく横に振った。