「・・・どうなんだろうね。でも今の所、ここに来て不幸だと思ったことはないよ。色々と大変な事はあるけどさ。フルートが吹けるだけで、私は幸せだよ」
「そうか。・・・でも、いずれ私がもっと幸せにしてあげるから、な」
「その言葉・・・フランが女の人にモテるのよくわかるわ」
「・・・真面目に言ってるんだが」
フランは少しふてくされたような顔でるりを見る。
人前ではあまり顔を崩さないフランが、るりの前ではいつも顔を歪まして我侭な少年のようになる。
でもなぜかそれがるりにとっては少し愛おしかった。
るりはついつい笑みを零してしまう。
「何が可笑しい?」
「いや、私ショタ好きなんだなぁ、と思ってさ」
「は?」
「いや、こっちの話」
怪訝な顔を浮かべるフランに、るりは笑って手を差し出す。
フランはその手を取ると、またゆっくりとホールへ向かった。