「どこよ・・・・ここは」

目に映る光景に、言葉を失くした。



蔵野るり、19歳。

音大でフルートを専攻している女子大生。
今日もフルートと楽譜を片手に大学に通う途中だった。


・・・のに。


横断歩道を渡る途中で、信号無視のトラックが自分の目の前に現れて・・・・。



てな所で、記憶は途絶えている。

で、気付いたら見知らぬ森の中にいたわけで。

「・・・ここは天国?にしては、聞いてた風景とは違うよね・・・」

聞いた話だと、あの世ってのは一面のお花畑で、川が流れていて、川の向こう側では死んだ人が手招きしてて・・ってはずなのに。

そこは薄暗い森の中。
木が生い茂って光もあまり入ってこない。



「なんてこった・・・。これは地獄の入り口かな?」



るりはがっくりと肩を落とした。