「森本、小宮山に告白したってー。」
咲葉さんは、俺に腕枕をしながら携帯を見ている。
「敦哉はすごいなー。3年も一緒にいたのに、全然気づかなかったよ…。」
「咲葉さんって、意外と気づかないよね…。」
「うん…。しかし、敦哉はすごいなー…。」
咲葉さんは携帯を置いて、俺の頭を抱きしめる。
「いきなり何言い出すのかと思ったら、こういうことだったんだもんね…。
 初めて会った人たちなのに、あんなに一生懸命話して…。すごい子だ。」
そう言って俺の髪を撫で回す。
「敦哉のおかげで、大事な人たちが幸せになったよ。…ありがとう。」
「うん…。」
自分でも、よく言えたな、と思う。
…それは咲葉さんが隣にいて、手をつないでいてくれたからなんじゃないか、と気づいて
抱きしめる腕に力をこめる。
咲葉さんもまた抱きしめ返してくれて、言った。
「それにしても…敦哉の行動力はすごいね…。一人で迎えに来ちゃってさ…。
 私の携帯が繋がらなかったら、どうしてた?」
「…何も考えてなかった…。」
咲葉さんのことになると、後先考えずに行動してしまうなあ…。
今更、少し怖くなってきた。
「ヘタしたら、終電も逃して、うろたえてただろうね…。
 ま、おやすみコールはしようと思ってたから、大丈夫だけど。」
俺の髪をもふもふしながら、咲葉さんは言う。
「そうだ。吉川さん、今日の送別会に来てくれたんだよ。
 部長もいるのに、勇気を出してきてくれたんだー。嬉しかったな。」
「よかったね。」
「うん。すごくお礼を言われたけど、敦哉のおかげなんだよね。
 敦哉が心の声を聞いてなかったら、追いかけてないもん。
 私一人だったら、めんどくさがって、ほっといただろうなー。」
「そっか…。」
こんな俺でも役に立てたんだ。…なんだか鼻がつんとする。
すると、咲葉さんが何か言った。
「敦哉が…。大学卒業するまで、こうしていられたら…。」
咲葉さんが珍しく、か細い声を出すので、俺は顔をあげる。
『結婚したいな…』
咲葉さんの心の声に、俺は舞いあがり、言った。
「お願いします…。」
『お願いされた…。』
咲葉さんは笑って俺を抱きしめる。
その夜、俺たちは一晩中抱き合って眠った。