「モテ期か…。私のは、女子に好かれて終わった気がするなー。」
小宮山さんが呟く。
「小宮山は男らしいもんねー。男だったら、マジで惚れてると思うもん。」
咲葉さんが言うので、小宮山さんをまじまじと見つめてしまう。
…普通に綺麗な人だけど、男らしいのか。
確かに、さっき駅まで迎えに来てくれた行動力はすごいし、声も大きくて助かった。
でも、綺麗な人だと思うけどなあ…。
なんだか視線を感じて見ると、森本さんが俺を睨んでいた。
『ジロジロ見るなよ…』
えー…?ヤキモチ?
こんなに咲葉さんとラブラブな俺に、ヤキモチを妬くなんて
相当、小宮山さんのことが好きなんだな…。
…好きって言えばいいのに。なんで言わないんだろう。
考えながら、ふと小宮山さんを見ると、心の声が聞こえた。
『しかし、敦哉君は可愛いなー。山本が襲いたくなるの、わかる』
顔に体中の血が集まって、熱くなり沸騰している気がする。…いや、のぼせている場合じゃない。
ちらっと見ると、やっぱり森本さんは睨んでいる。
この変な三角関係から、抜け出したい…。
そう思って咲葉さんを見ると、ご機嫌にカクテルを飲んでいた。
「おしゃれな店だよねー。落ち着いてて、お酒も美味しいし、来れて良かったー。」
ご満悦な様子で、俺の居心地悪さには気付いていない。
「敦哉が成人したら、また来ようねー。」
俺は笑って頷き、前を向くと二人に見られていた。
『いや、すぐ飽きられるだろ…』
『敦哉君モテそうだから、無理でしょ…』
声が聞こえた途端、目をそらされる。
…この二人、きっと気が合うよな…。
どうしよう…。心の声が聞こえることは、言えない。
咲葉さんに、こっそり耳打ちしようかな。
…でも、咲葉さんがいないと何もできないみたいで、かっこ悪い。
咲葉さんの友達、なんだよな…。悪い人達なわけがない。
がんばって、話してみようかな…。
俺は勇気を出して、話し始めた。
「あの…俺は咲葉さんのことがすごく好きで、いつも見てたんですけど、
 告白したときは信じてもらえてなくて…。」
3人ともキョトンとした顔で俺を見ている。
「だから、小宮山さんのことも、きっと影で想っている人はいると思います。
 小宮山さんは綺麗だし、かっこいいし…。」
言ってみて、かっこいい、は余計だったかも、と思ったが、もう遅かった。
「でも、言えない事情がきっとあって…。待っててあげてほしいんです…。」
小宮山さんは俺の顔を見て、不思議そうに小さく頷いた。
「あと…言わないとわからないけど、でも、言わなくても伝わることもあって、
 それをちょっとだけ、感じてみてほしいんです。」
小宮山さんは相変わらず不思議そうな顔だったけど、隣で咲葉さんが
「うん。わかる。…ね。小宮山も、わかるよね。」
笑顔で言った。
「う、うん…。」
『全然わからないけど…』
小宮山さんの心の声が聞こえる。…そうだよな…。
苦笑いでうつむくと、森山さんが言った。
「小宮山。…お前は美人だから…じ、自信持てってことだよ…。」
小宮山さんと目が合うと、森山さんの顔は赤くなっていく。
俺が森山さんの言葉を聞いて、満足げに頷いていると、
「え?…そういうこと?」
咲葉さんが俺の顔を見て言った。
『森山が小宮山のこと…』
そこまで心の声が聞こえたが、遮るように
「よし!解散!…会計しとくから、山本は適当に帰れ。」
森山さんが言った。
そして、小宮山さんの腕を掴んで
「小宮山…い、行こう。」
と真っ赤な顔で言って、立ち上がる。
「えー?どこ行くのー?」
小宮山さんはそう言いながらも、カバンを持ってついていく。
目を丸くしながらも笑っている咲葉さんの顔を見て、俺も嬉しくて笑った。