祐子さんに相談しても、心配しすぎだと言われることはわかっている。
だから言いたくなかったけど、俺は素直だから言ってしまった。
「心配しすぎよー。咲葉ちゃんは立派な大人なんだからー。」
案の定、俺の心配は笑い飛ばされてしまった。

昼休みになると、和成がやってきた。
そして、俺の暗い顔を見て言った。
「敦哉君…また咲葉さんと何かあった?」
『浮き沈み激しい…』
和成は笑っているが、呆れているように見える。
無駄にかっこつけるのはやめて、聞いてもらっちゃおうと思った。
「今日、咲葉さんの送別会なんだけど、帰りが遅いんだって。…心配でさ。」
「そうなんだ。迎えに行けばいいじゃん。」
和成が意外なことをサラッと言った。
「え?いいの?有りなの?うざがられないかな?」
俺が詰め寄ると
『相変わらず必死だな…』
心の声が聞こえて、和成は笑って言った。
「有りだと思うよ。恵美が夜バイトしてた時、俺も迎えに行ったことある。」
「へえ…。そうなんだ…。」
「うざいか、本人に聞いてみようか。」
そう言って和成は廊下に向かう。
ついていくと
「恵美…夜遅く帰るとき、彼氏が迎えに来てくれるのってイヤ?」
和成は、廊下で待っていた恵美ちゃんに聞いた。
「なに、突然…。全然イヤじゃないよ。嬉しいけど。」
怪訝な顔で恵美ちゃんが答える。
…嬉しいんだ…。
「でも、咲葉さんは来なくていいって言ったんだ。
 一人で来る俺のほうが心配だって。」
俺が言うと、恵美ちゃんと目が合って
『おぼっちゃんだもんねー』
心の声が聞こえた。
恵美ちゃんにも、そう思われてたのか…。
なんとなく沈んでいると和成が言った。
「敦哉君と同じくらい、咲葉さんも心配してるんだよ。」
『嫌な声を聞いちゃうかもしれないしね』
そっか…。確かに咲葉さんは、いつもさりげなく気づかってくれる。
嫌な声が聞こえたら教えてねって言ってくれるから、なんだか気持ちが軽いんだ。
「ありがとう、和成。…ごめんね、時間取らせて。」
恵美ちゃんにもそう言って、俺は保健室に向かった。