昼休みになるとすぐに携帯を取り出し、俺は咲葉さんにメールを送った。
休み時間の間にすでに文章は打っていた。
『執事と使用人がいるので、ふたりきりにはなりません。
 でも呼ばないと来ないので、邪魔はしません。
 きれいな花がたくさん咲いていて、静かでくつろげる庭です。
 ビールとお弁当も用意します。安心して遊びに来てください。』
朝、祐子さんに相談しながら考えた内容だから、大丈夫なはず。
迷いなく、俺は送信ボタンを押した。
よし…。誰かとご飯に行ってしまわずに、メールを見てくれますように。
願いをかけて俺は携帯を鞄にしまった。
顔をあげると和成がいた。
「メールしてた?」
『咲葉さん?』
「うん…。」
週末うちに来るかもしれないって言いたいけど、
断られたらかっこ悪いから言えない…。
「そっか。じゃ、またね。」
そう言って和成は教室を出た。廊下では恵美ちゃんが待っている。
その背中を見送りながら、ふと思う。
…和成は恵美ちゃんと、どんなメールをするんだろう。
休みの日はどこにデートに行くんだろうか。
長い付き合いなのに、聞いたことがない。
俺が女の子と縁がなかったからな…。ゆっくり話したい。
そして、アドバイスをもらいたい…。
和成は、ヤキモチとか妬かないんだろうな…。
何があっても、男らしくかまえてそうだ。
それに比べて俺は…。
そんなことを考えて暗くなりながら、保健室に向かう。
ドアを開けると、珍しく祐子さんがいない。
先に弁当を食べてようと思って、鞄を開けると、携帯が光っていた。
咲葉さんからメールだ。
返事が早いってことは、男とご飯に行ってないってことかな。…嬉しい。
『敦哉君の家、なんだかすごそうだねえ。行ってみたいな。』
やった…!来てくれそうだ…。嬉しくて顔がにやけてしまう。
なんて返事を書こうか考えていると、祐子さんが帰ってきた。
「ったく、教頭うるさいっつーの…。あ、メールした?咲葉ちゃんに。」
「うん。うちに来てくれるって。」
言いながら俺はメールを打つ。
『すごく嬉しいです。楽しみにしてます』
詳しいことは明日話せばいいな。…あー嬉しい。よかったー。
「幸せに浸ってないで、お弁当食べなさい。」
祐子さんに言われて、我に返る。
「うん。」
そう言って弁当の蓋を開けるが、ニヤニヤは止まらない。
週末が楽しみだなあ…。